母に捧げるエッセイ

息子からお母さんへ感謝のメッセージ!

朝ドラに出たでぇ!

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安定した収入が得られる仕事に
就いてほしいと思うのが
親心というものなんでしょう。

以前、私は俳優をしていました。
最初は劇団に入り、舞台を中心に活動。

劇団からは給料が出ないので
派遣の仕事をしながら活動をしていました。

ただ、収入が不安定で
将来の見通しが立たない私を
母はよく思っていませんでした。

だから、母からはよく
「そんなことより就職は?」
と聞かれるので、いつも私は、
「うん・・・」と口ごもっているばかり。

こういう話は、
よくあることなのかもしれません。

安定した収入で生活をしてほしいと思う親と
自分の好きなことをして
生きていきたいと思う子供との人生観の違い。

当時の私も
「母が望むように安定した仕事に就けば、
将来の経済的な不安は解消される」
ということは重々承知。

でも、私は「一度きりの人生だから
後悔しないようにやりたいことをやる」
という思いが強かった。

しかし、やりたいことをやったものの
劇団での活動がマンネリ化し、
モチベーションが下がった私は、
劇団を退団してしまいました。

それでも、夢を諦めることなく、
今度はプロダクションに所属をして
ドラマに出演することを目指します。

いくつか目指す理由がある中で
母がドラマ好きである
ということもありました。

もし、有名な作品に出ることができれば、
ドラマ好きの母が喜んでくれるかもしれない。

私はレッスンに励み、
いつチャンスが来てもいいように
演技力を磨きました。

そして、ついにチャンスは訪れます。
エキストラではありますが
あのNHK朝ドラに出演することが決定!

撮影当日、NHKへ。
控え室でスタッフから撮影の説明を受け、
衣装もメイクもバッチリ!

リハーサルが行われるということで
スタジオへ行くと本物の建物のように
しっかりしたセットに感動。

そして、主演の女優さんをはじめ
出演する有名な俳優さんがスタジオ入り。
挨拶をしながら
「テレビと一緒やぁ〜」とまたまた感動。

リハーサルが終わり、いよいよ本番。
私は、関東大震災で大阪へ避難してきた役。

最初の出番は、ケガをしていて
病院の待合室で座っているシーン。
次は、避難所でおにぎりを頬張るシーン。
どちらもアップで映っています。

それから数シーンに出演し、
その日の撮影は終了。

母には、放送前日に
「朝ドラに出たでぇ!
明日、放送されるから観てやぁ」
と伝えると驚いていました。

放送当日。私は仕事だったので
DVDに録画して観ることにしましたが
母はリアルタイムで観てくれたみたいです。

そして、私が帰宅するなり、
「映ってたやんか!」と喜んでいて
「おにぎり美味しかった?」
「○○ちゃん(主演女優さん)綺麗やった?」
とドラマ好きの母は、嬉しそうに質問責め。

私が俳優活動をしているのを
よく思っていなかった母の見事な手のひら返し!
私は「テレビって凄いなぁ」と感心しました。

それから、私は、
ドラマや映画に20本程出演しましたが
俳優で食べていくことが難しく、
夢を諦めることにしました。

ただ、朝ドラに出た時に
母が喜んでくれたことが
私にとって一番嬉しかった出来事。
本当に一生の思い出になりました。

その後、母は認知症失語症
脳梗塞で右半身麻痺になってしまい、
私が介護をすることになります。

母の介護は大変でしたが
私が俳優の夢を追いかけることができたのは、
間違いなく母のおかげ。
恩返しの気持ちで介護を頑張りました。

現在、母は入院しています。
私は面会に行くといつも
「お母さん。ありがとう」
と感謝の気持ちを伝えています。

夢を追いかけ始めた頃は、
親や周りから理解されず
孤独を感じることが多い。

でも、続けていれば、
必ず、周りが協力してくれたり
反対していた親も応援してくれます。

だから、夢に向かって頑張っている人は、
自分が納得するまで夢を追いかけてほしい。

頑張れ!ドリーマー!