母に捧げるエッセイ

息子からお母さんへ感謝のメッセージ!

おいしいお弁当のお返し

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お腹がグゥ〜グゥ〜と鳴る。
私は学生時代、
母が作ってくれたお弁当を
食べるのが楽しみでした。

母はパートで働いていて
朝早起きをして、私と姉のお弁当と
家族の朝ごはんを作り、
ごはんを食べ終わると父を送り出して
家事を済ませてから仕事に行きます。

そんな忙しい母でしたが
毎日、私たちのために
おいしいお弁当を作ってくれました。

キーンコーンカーンコーンと
チャイムが鳴り、待望のお昼休み。
机の上にお弁当を置くと香ばしい匂い。

「今日のおかずは何かなぁ」
とワクワクしながら
蓋を開けるとぎっしり詰まったご飯と
色とりどりのおかずがお目見えします。

敷いたレタスの上に
ポテトサラダとプチトマト、
ウィンナーと卵焼きが寄り添い、
銀紙に包まれたミートボールもあって
栄養バランスがよく華やか。

私は感謝の気持ちを込めて、手を合わせ
「いただきま〜す!」と言って
母の愛情たっぷりのお弁当をがっつく。
喉に詰まりそうになると
お茶で流し込みながらがっつく。
食べ盛りの私は、あっという間に完食。

お腹いっぱいになり、
そのまま机に顔を伏せてお昼寝タイム。
いびきをかいてグゥ〜グゥ〜。

それから30年が経ち、
私は認知症失語症
脳梗塞で右半身麻痺になった
母の介護をすることになりました。

母のデイサービスが休みの日、
私はお昼ごはんの買い出しに
スーパーへ出かけます。

途中、母校の前を通った時、
「お母さんが作ってくれたお弁当
おいしかったなぁ」
と学生時代を思い出しました。

帰宅した私は、車椅子の上で
ゆっくりとテレビを観ている母に
「お昼ごはん作るでぇ〜」
と言うと母のお腹が
グゥ〜グゥ〜と鳴ります。

さっそくウィンナーを焼き、
次に卵焼きを焼こうと
容器に卵と少量のしょうゆを入れて
かき混ぜ、フライパンへ流し込みます。

私は母ように料理がうまくないので
卵焼きを作るつもりが
スクランブルエッグになってしまいました。

お皿にレタスを敷き、
焼いたウィンナーとなんちゃって卵焼き、
レンジでチンをしたミートボールをのせて
買ってきたポテトサラダと
プチトマトも添えます。

母は脳梗塞の影響で、飲み込む力が弱く
食べやすくするためにおかずを細かく切り、
あとは、お茶碗におかゆをよそい完成です。

「ごはん食べよかぁ〜」と声をかけて
お昼ごはんを机に置くと前のめりになる母は、
利き腕が麻痺しているので、私が介助をします。

スプーンで食べ物を口の中に入れると
モグモグしてゆっくりと飲み込む。
母は、その度に私の顔を見ます。
話すことができないので
「おいしい」という気持ちを
伝えたいのかもしれません。

途中、喉が詰まらないように
とろみを付けたお茶を飲ませながら
ゆっくりと食事を楽しみ完食。

後片付けを済ませた私は、
母の所へ行くと車椅子の上でウトウト。

母の気持ちよさそうな顔を見て
「これで、おいしいお弁当のお返しが
できたなぁ」と嬉しく思いました。

そのうちに母は、いびきをかいて
お昼寝タイム。グゥ〜グゥ〜。